環境構築
本チャプターでは、Ymir Hypervisor の開発に必要な環境の構築について説明します。 これらは推奨される環境であり、以下の条件を満たさない場合でも開発ができる可能性はあります。 お使いの環境に合わせて適宜読みかえてください。
想定する環境
以下の環境における開発を想定しています:
- Intel VT-x がサポートされている x64 (Intel64) アーキテクチャ
- Nested Virtualization がサポートされているVMM
- Linux であれば QEMU/KVM が Nested Virtualization をサポートしていて、CPUをパススルーできる
- Zig 0.13.0
筆者は以下の環境での動作を確認しています:
- 12th Gen Intel(R) Core(TM) i9-12900
- Ubuntu 24.04 LTS (Linux 6.8.0-45-generic)
- QEMU emulator version 8.2.2 (Debian 1:8.2.2+ds-0ubuntu1.2)
CPU に関しては、最近の Intel Core シリーズであればほぼ確実に VT-x がサポートされていると思われます。 実装は仮想環境上で行うため、必然的に Nested Virtualization ができる環境が必要になります。 VirtualBox でも VMWare でも問題ない可能性はありますが、本シリーズでは QEMU/KVM の使用を想定します。
お使いの CPU が VT-x による仮想化支援をサポートしているかどうかは以下のコマンドで確認することができます。 なお、CPU 自体が VT-x をサポートしていても BIOS で無効化されている場合があることに注意してください:
cat /proc/cpuinfo | grep vmx
Zig
本シリーズでは、Zig 0.13.0 を使用します。 Zig はまだ 1.0 に到達していない言語であるため後方互換性が保証されていません。 0.13.0 以降のバージョンがリリースされた場合も多少の修正で動くはずですが、本シリーズでは執筆時点の最新バージョンである 0.13.0 を使用します。
Zig には公式のバージョンマネージャが存在しません。 以下のどちらかの方法で Zig 0.13.0 をインストールしてください。
1つ目がサードパーティ製のバージョンマネージャを使う方法です。 サードパーティ製の Zig バージョンマネージャのひとつに tristanisham/zvm があります。 GitHub の README から環境に合った方法で zvm をインストールした後、以下のコマンドで 0.13.0 をインストールします:
zvm install 0.13.0
zvm use 0.13.0
zvm にこだわる必要はないため、お好みのバージョンマネージャ1 を使ってください。
2つ目が公式のリリースページを使う方法です。 Zig のリリースページから 0.13.0 のバイナリをダウンロードし、パスが通っているディレクトリに配置してください。
Language Server
Zig の language server である ZLS を使用します。 様々なエディタで利用可能な拡張が存在するため、Zigのツールガイドに従って環境をセットアップしてください。
zls と zig のバージョン
利用する Zig と ZLS のバージョンは必ず一致させてください2。
OVMF
OVMF は VM 上で UEFI をサポートするプロジェクト3です。
QEMU ではデフォルトで SeaBIOS と呼ばれるレガシーBIOSが使われますが、本シリーズでは OVMF を使って起動します。
使用する OVMF は、x64 アーキテクチャの 64bit モード起動をする X64
ビルドを利用します。
これにより、ブートローダを Long Mode で実行することが可能になります。
Ubuntu を使っている場合には以下のコマンドでインストールできます:
sudo apt install ovmf
他の OS やパッケージマネージャを利用している場合には、それぞれの方法でインストールしてください。 また、ソースコードからのビルドも可能です。 その場合には TianoCore の GitHub Wiki の手順に従ってください。
例として、他には zigup があります。
バージョンを一致させないと ZLS が正常に動作しません (e.g. "ZLS not pulling in information from dependencies")